建築家をめざして

建築家として独立を目指す。建築について興味ある内容、一級建築士(初年度合格)の勉強方法等を綴ります。

【旅。建築見学】愛媛建築旅行2日目その① 臥龍山荘

 

更新非常に遅くなりました。

これからは簡潔に数を多くしていこうと反省。。

 

愛媛旅の2日目は、この旅のメイン臥龍山荘へ。

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数寄屋建築 1909年

 

臥龍山荘は大洲という城下町にある城主の庭園・別荘のような建築で、肱川(ひじがわ)に沿って平行にのびる敷地に、臥龍院・知止院・不老庵という3つの建築を点在させた配置構成をしており、自然と建築一体で作る空間を体験することができます。

 

松山からは車で約60分。駐車場はないのですが、『大洲まちの駅あさもや』に駐車場があり利用できます。 

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大洲の城下町の街並み

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水路、石畳、竹を利用した演出。期待が高まります。

 

山荘へ。

まず、山荘へはなるべく朝早く行くことをお勧めします。

 

ここで簡単に私の建築の見方のススメを紹介します。

日本建築の見方として、一番見たい建築は朝イチに行くことです。

誰もいない方が凛と静まる空間を体感できます。また、日本建築の中に現代のカラフルな洋服の人がたくさんいると、和の空間の持つ静けさ・厳かさがぼやけてしまいます。営業時間を調べ、なるべく早く行くことをお勧めします。

 

反対に、現代建築。それも、特に公共建築は、人でにぎわう時間帯の見学をお勧めします。賑わいの中での人々の溜まりなどによって生まれる空間の動きを感じやすいです。設計意図通りに実現できている場合や、子供などの思わぬ空間の楽しみ方を感じることができる場合があり、色々な発見をすることができます。

 

臥龍山荘内部へ。

f:id:su-arch:20170309001645j:plain臥龍院内部は撮影禁止のため、外部空間を紹介します。

外観は大きな茅葺き屋根の一見すると農家のような外観をしています。おおらかな外観に対して内部には様々な繊細なディテール、技術がちりばめられています。

母屋には、四季を表現した清吹の間、満月と富士山に霞む違い棚が特徴的な霞月の間など、日本の風景のコンセプトに合わせた趣向を凝らした部屋があり細部まで見てて興味深い建築となっています。

 

細かなディテール。部材のとめはね、端部の収まり、に意思が込められデザインされているため、様々なモノとモノの『際(きわ)』が際立って、より自然と建築の境界が鮮やかに感じられました。

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濡れ縁

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下の飾り釘には、京都千家十職の一人、金物師・中川浄益の銘が刻印されています。

 

 

 

庭を進む。

飛石の中には丸いアクセントとして石臼が配置されている。

石臼の粉を挽く目地の幾何学的な模様の陰影が自然の中で際立っています。

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臥龍山荘の庭は庭師の方々が非常に丁寧な手入れをしてくださっており、

冬にもかかわらず非常に綺麗な緑を目にすることができる。

水場には所々お花が生けてあり、古くから伝わる日本的なおもてなしの心を体感することができました。

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不老庵

敷地の一番奥にひっそりと立つ茶室。

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素材の質感を感じる一方で、とても抽象的で、透明性の高い、周囲との親和性の高い空間が広がっている。

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不老庵は崖にせり出す懸造の構成となっており、遠方に広がる山々の風景、眼下の川を借景として取り入れている。

 

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 不老庵の天井は船底を模したヴォールト状の造りになっている。

満月の夜には、川の水面に反射する光が天井に映り込み、柔らかに光が拡散する贅沢な空間となるそうです。

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日本建築に共通して言えますが、座った状態が非常にしっくりくるスケール感。

丸みを帯びた天井が室内の空間の方向性を弱め、雄大な風景と柔らかく連続する小さいけど大きな空間でした。

 

不老庵の屋根を支える捨て柱。上方向の成長は止まっているが、横方向にはまだ葉っぱが茂り生きている。 

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朝一で行ったため、人がおらず、何度も何度も敷地を往復してしまいました。

時間とともに太陽の光や反射が微妙に変化し、時間を忘れて空間の移ろいを感じることができました。

様々なところに、設計者や職人の工夫・仕掛け散りばめられ、日本人の味わい深い粋な仕事を体感できました。

 

 

帰る前に、川辺まで下りて対岸から自然の中にひっそりと建つ不老庵を見るのを忘れずに。。懸造(かけづくり)の構造を確認することができます。

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長い年月をかけてこの土地の風景の一部となった、小さいけど大きな建築を体験できました。

 

 

臥龍山荘については、以下の本に、綺麗な写真・様々な分析等が載っております。

水郷の数寄屋? 臥龍山荘

水郷の数寄屋? 臥龍山荘

 

次回は愛媛の残りの建築を紹介したいと思います。  

 

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